民宿Kさん
ゴールデンウィークの終わりに、お札をいただきに宗像大島へ行く計画を立てた
存分に宗像大島を「視たい」ので、二泊三日にした
大島にはホテルが無く、民宿だけだった
一人です、と電話で告げるとその場で断られた
「料理がね、人を呼ばなくちゃいけなくなるでしょう・・・だから・・・すみません」
「お一人様はお断りしているんです。どこの民宿もそうだと思いますよ」
そ、そうなのか・・・
でもこの私の酔狂な旅に付き合ってくれそうな友人知人は居ない
そして、今回は必ず一人で、という気がしていた
一人でやらなくてはいけないのだ
そんな中、
「素泊まりでもいいならお考えくださいねー」
と言ってくださった民宿があった
今回泊まらせていただいた民宿Kさんだった
出発の前日に、飲食店を調べるとみんな15時くらいで閉まってしまうらしい
遅いところでも19時だという
どうしよう・・・・・大丈夫だろうか・・・
飲食店の予約の電話をかけたくても、もうすでにお店が終わっている時間だった
福岡まで飛行機で行き、そこから博多までタクシー、そこから鹿児島本線という電車に乗り東郷へ
東郷からタクシーで神湊フェリー乗り場に行き、そこからフェリーで宗像大島に渡った
ここまではとっても順調だった
海がとても綺麗だった
船着場から、今回の目的地の宗像大社中津宮の鳥居が見えた
とうとうやって来た、とちょっと涙が出そうになった
「フェリー乗り場からね、そうもかからんです。ゆっくりで五分、急いでも三分くらいかな」
予約する時に民宿Kさんはそう言ってらしたので、まあまあ重い旅行鞄を持ちながら島のフェリー乗り場から歩いた
とても静かで花がたくさん咲いていて、いい感じがした
猫ちゃんがたくさんいた
灰皿を利用してご飯を軒先で食べさせていた
看板が控えめだったので、見落としながらもなんとか民宿Kさんの目の前に着いた
まだ15時くらいなので、神社には充分に行ける
荷物を置いたらすぐに神社に行こうと思った
歩いていけるように、民宿は全て中津宮にある方に集中して問い合わせの電話をかけていた
インターホンを押しても出てくる気配がない
引き戸を開けてすみません、と声をかける
誰も出てこない
電話を鳴らしてみる
電話は玄関のすぐ隣の部屋で鳴った
前日に確認のお電話をKさんからいただいたし・・・でも居ないというのはなぜだ・・・
と少し不安になったが、とりあえずスマホの充電が一桁台だったので、
ここから歩いていけるSPという喫茶店に行って充電させてもらおうと思った
SPのお母さん
先ほどの軒先にいる猫ちゃん達の間を旅行鞄を抱えながら通って、歴史を感じるフォントのSPの扉を開けた
「こんにちは」
お客さんは三人程いらした
一瞬間があって、
ショートカットで薄くお化粧をしたここのお店の主と思しき女性が、
いらっしゃいと声をかけてくれて、私が手に持ったスマホで充電器を見るや否や椅子をどかしてコンセントのありかを教えてくれた
椅子に着いて食べ物をオーダーした自分には私以外のお客さんは居なくなっていた
SPのお母さんは私から事情を聞くとすぐに民宿Kさんに電話をしてくれた
やはり電話に出なかったようだ
私はこのお母さんはよく気のつく、親切な人だなと思った
「何しに島に来たの」
とお母さんがお茶を入れながら私に尋ねた
一瞬迷った
なぜならこういう経緯でここの神社しかないと思い、お札をいただきに来ましたという説明が奇異に聞こえるのでは、と思ったからだ
「変な人だと思われたくない」という虚栄心が一瞬言うのを戸惑わせた
「嫌なら言わなくてもいいよ」
とお母さんはサラッと言った
いえ、違うんですと私は話し始めた
話の冒頭で
「呼ばれた?」
とお母さんに聞かれた
「簡単に言うとそういう事だと思います」
と答えた
「いっぱいいるよ。全国のいろーんな神社に行って、最終的にここだって行ってくる人。江ノ島で龍視たとかね」
「そうなんですか! 私もまさに江ノ島で龍を視ました」
「そうなの」
お母さんは事もなげに言う
お母さんはそういった事に対してとても感じやすく、寛容な方なのだなと思った
「最初にあなたがここに入って来たのを見た時に、ただの旅行じゃないなと思った。何か調べに来たんだと思った」
私は簡単に山口での「たぎつ」話や、龍王と印の事などを話した
なので、この神社しかないのだろうと結論を出してここに来た事
でも、もしそうではなかった場合でもそれを受け入れる事
お母さんは私は何も感じないの、と言いつつ後々とてもヒントになる話しをしてくれた
「ここに来たお客さんが話してくれたんだけどね、宗像三姉妹はスサノオと結婚したんだって。出雲に嫁いだんだけれど、なぜだかスサノオから必要とされなくなって、三姉妹出雲から宗像に来たんだけれど口封じの為に沖の島に留め置かれたんだって」
(あくまでお母さんがお客さんから聞いた伝聞です)
すごい・・・初耳です
「まだ明るいから中津宮今から行ってご覧。あそこの拝殿のとこの彫刻がね・・・変わってるの・・・なんて説明したらいいのかわかんないけれど」
充電したスマホで民宿Kさんに電話するとちゃんと出てくれたので、早速民宿に荷物を置いて神社に行く事になった
SPを出る時に、お母さんが「日本の神様カード」を一枚引いてみて、と出して来てくれた
私が引いたのは「金山毘古」のカードだった
手には剣を持っているイラストが解説書に添えられていた
五感を働かせなさいとあった
剣も五感を働かせろと言うメッセージも、その後とても意味のある事だと思い知った
宗像大社中津宮
民宿に荷物を置かせてもらって、神社へと出かけた
日差しは初夏の強さだけれどもう日が傾きかけていて、外へ出るにはちょうど良かった
潮風は東京近郊の海のようなベタつく感じはなかった
鳥居が見えて来た
鳥居は陸にある三女が祀られている辺津宮の方に向けて造られている
鳥居の先には両側を樹木に覆われた急な階段が見える
一礼して参道に入った
池があり、手水があり、石造りの急な階段を上がっていった
紫色で菊の御紋のある奉納幕をくぐる時に爽やかな風が吹いた
拝殿が目の前にある
戸が閉まっていた
手を合わせると、まず蛇の気配
蛇が両方にいて何か文字の様なのものを形作っている
肌が真っ白で真っ黒な髪の女性の神様
白と黒の装束を身につけている
顎がとても細くて顎のところにほくろがある
袖を折っていてるのか、横向きの姿はやはり蛇を思い起こさせた
お顔はチェジウに似ているアジア系の綺麗な方だった
でも・・・
でも・・・・・・
なんとなく感じにくいし、視えにくい
夕方だからかな?
お社の扉が閉まっているからかな?
とその時は思った
一礼して神水と言われている天の真名井
https://nihonsinwa.com/page/1012.html
に行き、しばらくじっとしていたりした
それからまた石の階段を降りて、七夕伝説の織姫が祀られている祠をお参りした
道路を挟んで反対側には彦星もお祀りされている蛭子神社がある
私は先ほどのSPのお母さんの話を思い出していた
そもそも宗像三女神の誕生は
天の真名井で口をすすぎ、口の中でバリバリと噛み砕き吹き出したら宗像三神が生まれたという
今では三姉妹はそれぞれ離れた島と陸のお宮で祀られている
七夕も織姫と牽牛が天の川で隔たれて離されていて、
一年に一度会える事になっている
蛭子大神も伊奘諾と伊邪那美の間に生まれた最初の子でありながら、葦船に乗せられて流されている
常にきょうだい、男女、親子との間に水が介在して「離されて」いる
「三女神は素戔嗚と結婚したらしいんだけれど、もう要らないって言われてね、宗像に戻って来たんだって」
SPのお母さんから聞いた話と、この共通する「離された」出来事と、楠を視るとなぜだか
「母と子が離される」
イメージが全部繋がっている様に感じた
一日目の夜
この島に来る大半の観光客は18時のフェリーで陸に戻るので、飲食店が全て18時くらいまでで終了してしまう
SPのお母さんが
「予約しといてあげるよ」
と民宿Kさんから歩いてすぐのKMと言う魚料理のお店に話しをつけてもらった
何から何までありがたい・・・
KMさんに夕方行くと、お座敷におじさんが大の字で寝ていた
奥から男の人が出て来て、ああ、と言う感じですでに用意してあった魚が盛りだくさんの定食がすぐに出された
食べようとしたところで外国人の団体客の方達が入って来て、厨房の男の人がいい加減起きなよ・・・と言う感じで寝ているおじさんを起こした
「あれっいつからいたの?」
とおじさんに言われた
おじさんは堰を切ったようかの様に話し始めた
おじさんはここの経営者で、沖の島の国宝を船で運んだんだ! と胸を張って教えてくれた
外国人の方達の通訳みたいな事もしてすっかり長居をしてしまい、結構酔っ払ってしまった
「お会計はいい。その代り明日も来いよ」
とおじさんはまた座敷に寝てしまった
私は宿に戻り、お布団に入るとすぐに寝てしまったのだが、
幽体離脱をしてかかとの部分だけうまく離脱できずにぐるぐるローリングしてかかと部分が畳に擦れて痛いと言う夢だかなんだかよくわかんない夢を見た